神村酒造が生まれたのは、1882年。沖縄県那覇市繁多川で、小さな家族経営の酒蔵として泡盛造りをはじめました。夕方くらいになると地元のみなさまがやってきて、他愛もない話で笑いあい、心あたたまる時間を過ごしていたそうです。しかし先の大戦で、私たちは工場設備、貯蔵していた泡盛をすべて失いました。もちろんそれは私たちだけの話ではなく、どの酒蔵も同じ。泡盛は壊滅状態で、飲めるお酒といえばアメリカから輸入されてくるビールやウィスキーなどが主でした。何もない戦後ですから、まともに泡盛が造れるわけでもありません。ましてや熟成させた古酒などは夢のようなお酒でした。

ある程度の品質の泡盛ができるまで10年以上かかり、やっとのことで泡盛を販売していくのですが、すでに沖縄は洋酒嗜好に変わっていました。かつてのようの泡盛を飲むことが当たり前ではなくなっていました。けれど、泡盛は沖縄の大事な文化です。その魅力を伝えたい、笑顔が溢れていたあの光景をもう一度広めたい。そう願い、三代目神村盛英が考えついたのは、「飲まれているウィスキーと飲ませたい泡盛の良さを兼ね備えた泡盛」を造ること。10年の研究開発をかけ、1968年に暖流が誕生しました。

その想いが通じたのか、ウィスキーを飲んでいた方からも指名され、現在でも多くの方に愛飲されています。
実は、暖流を通して培った樽貯蔵の技術は、他の酒蔵にも公開することにしたんです。泡盛の復活に貢献することが目的であり、私たちの泡盛だけが愛されればいいわけではない。結果、今では樽貯蔵泡盛はいくつもの酒蔵で造られ、泡盛の可能性を広げています。

暖流のシンボルマークは「進貢船」です。琉球王朝時代、黒潮「暖流」に乗ってさまざまなモノやコトを運び、たくさんの出会いをつくってきた琉球の舟です。私たちはこの進貢船のように、泡盛を通して暖かいご縁をつないでいきたい。そうして、みなさまに幸せな出会いがあふれますように。そのために、自分たちにできることを精一杯、ひとつひとつ丁寧に、これからも挑戦し続けていきたいと思います。